センタ-職員と無責任な飼い主たちとの戦いが始まった。
「噛み癖があって飼えない」60歳代の男性はそんあ理由で、コ-ギ-を持ち込んできた。元々飼っていた息子が海外転勤になり、自分が面倒を見ることになったという。「犬が悪いことをしたんだから、罰を受けて当然だろう」そう主張する男性に対し、小山信係長がこう詰め寄った。
「噛んでいいと教えてしまったのはあなたの息子ではないか。息子の失敗を、なぜこの犬が命をかけて償わなければいけないのですか」
またある時は、引っ越しで飼えなくなったという女性が来た。小山さんはまずこう諭した。
「ここに来れば、この犬は命を絶たれます。飼い主としての最後の責任を果たすため、新たな飼い主を探してください」
だが、女性は、30人ほどの知人にあたったが、見つからなかったと説明する。それでも、小山さんは食い下がる。「たった30人に聞いて回ったくらいでこの犬が殺されるなんて、理不尽じゃないですか?」
そして、地元紙の情報欄への広告掲載などを促す。それでもダメな時は、言葉もきつくなる。
「なぜ引っ越す可能性を考えなかったのか。もう二度と動物を飼わないでください」
活発な「里親さがし」
場合によっては、飼い主を殺処分に立ち会わせる。
飼い主に居ぬを抱えさせたまま、獣医師が麻酔薬などを静脈注射する。犬は飼い主の腕のなかで痙攣しながら亡くなっていく。そんな経験をした飼い主は「二度と飼わない」などと言い残し、帰っていくという。
「殺処分ゼロ」を目指して活動しているのは、行政だけではない。獣医師会、ボランティア団体、ペットショップなど取扱業者らが市動物愛護推進協議会を結成し、精力的に動いている。
取扱業者らは獣医師会の協力で業界内への啓蒙活動を行う。行政が迷子犬をホ-ムペ-ジで公開し、市民ボランティアは収容犬の里親を募集する公告を地元紙の情報欄に自費で載せる。
そして、07年度、熊本市が飼い主などから引き取った犬はわずか52匹。
10年前の10分の1まで減った。
迷子犬などの保護を合わせても総収容頭数は610匹。一方、、返還・譲渡に努めた結果、殺処分された犬は78匹にとどまった。
収容中に病死した犬も含めた殺処分率は16・9%までに低下したのだ。
殺処分数がこれだけ少ないから、1匹ずつ麻酔薬などで安楽死させることも可能になる。
熊本市動物愛護センタ-にある二酸化炭素による殺処分機はもう2年以上、動いていない。